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ずっと気になっていた、栃木県の黒磯を訪れた。
このまちを知ったのは、もう数年前のこと。
日本仕事百貨のナカムラケンタさんから、黒磯にあるカフェ「SHOZO COFFEE」の話を何度か聞いていて、印象に残っていたのだ。
カフェオーナーの菊池省三さんは黒磯の出身で、30年前に実家を改装してカフェを開店。まだスターバックスも上陸していない1980年代に、日本のカフェ文化の先駆け的存在だったそう。
当時、シャッター街だった通りにカフェを開いたことで、一軒、また一軒と、近隣にお店が増えていった。それもレストラン、パン屋、花屋、洋服屋など、おしゃれなお店が続々と増え、通りににぎわいが生まれた。
私が訪れた日も、平日で寒い雨だったけれど、「SHOZO COFFEE」はほぼ満席だった。ここは宇都宮駅から1時間も離れた、小さなまちである。びっくりした。
あるインタビューで、省三さんはこう言っている。
「パンを焼いている香りや、コーヒーを焙煎しているにおい、お菓子を焼いている匂いが街に広がっているようなところは、きっといい街だろう。洋服屋やお花屋があれば、街に色がつく。“色と香りがあふれている街”が、自分にとっていい街なのだと気づきました」
黒磯は、まさに色と香りがあふれていた。